リレーコラム

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散骨について


皆さん、『散骨』という言葉はご存知ですか?

旧来より日本ではご遺骨をお墓や寺院、納骨堂に埋葬(収蔵)するのが一般的でしたが、近年では価値観や宗教観の多様化が進み、これまでの常識にとらわれない新しいご供養の方法が出てきており、「散骨」もその中の一つにあたります。ご遺骨をお墓や寺院、納骨堂などに収めず、故人やご遺族が希望した場所に散布する(撒く)というものです。

金沢などの北陸地方においては比較的、古式ゆかしく信仰心が篤い土地柄ということもあり、実際にこの『散骨』をなさったという方はまだそう多くはいらっしゃらないのではないかと思いますが、今後は少子高齢化、価値観、宗教観の変化などによって新しいご供養方法を検討なさる方も増えるかもしれません。

『散骨』にはいくつか方法がありますが、現在、最も一般的なのが「海洋散骨」です。これはクルーズ船やモーターボート等をチャーターし、海上(沿岸から遠く離れた沖合)で散骨するというものです。「海洋散骨」は請け負ってくれる業者も多くプランやかかる費用も様々ですが、専門の業者に任せることで近隣の住民や漁師とのトラブルの恐れもほぼなく安心して行えることから、『散骨』を希望される方にはおすすめと言えます。
対して「山林や平地での散骨」を希望した場合、基本的には国や他人の土地での散骨は避けるなど、様々な配慮が必要となります。自分で所有する土地か所有者の許可を得た土地でなければ行うことは非常に難しいため、場合によっては宗教法人や団体が管理する私有地内での散骨(樹木葬の派生プランとして)を以て目的を果たす方もいらっしゃるようですが、その場合は何らかの費用が掛かると思われます。
あと『散骨』の一種として「宇宙葬」と呼ばれるご供養方法も登場しており、これはバルーンやロケットを利用してご遺骨を成層圏まで打ち上げ、地球の周囲を周回させるといったものです。「宇宙葬」を請け負う業者も複数ありますが、業者によって打ち上げ方法、プラン内容やかかる費用には大きく差があるようです。

さて『散骨』についてはメリットとして「お墓を持たなくてよい」、「管理の手間が省ける」、「あまり費用がかからない」といったイメージが先行しているようですが、それらはある程度は正しいですが、いくつかの注意点もあります。
まず、後日、お参りしたい方(手を合わせたい方)にとって、どこでお参りすべきか非常に分かりにくい事が注意点として挙げられます。寺院やお墓など標となるものが無いので当然といえば当然ですが、明確でないと困る人も出るかもしれませんね。
そして「費用」についてですが、上述の通り、業者やプラン内容によって費用には差があるほか、『散骨』する前の下準備として、ご遺骨を人骨と分からないくらいまで粉状に粉砕処理する「粉骨処理」にもいくらかの費用がかかります。また宗教法人や団体が管理する私有地での散骨の場合、使用料金や管理費が別途かかる可能性があります。

私自身、仕事柄、ご葬儀だけでなくご法事やお墓、ご供養のご相談を受ける機会も多くあります。知人やお客様の中でたまに「将来、○○と一緒のお墓には入りたくない。それなら散骨してほしい。」という方がいらっしゃいます。その場合には「お気持ちはお察ししますが、あまり急いでお決めになるよりかは、一度ご家族で(配偶者様やお子さん達とも)じっくりご相談なさってみては?」とお答えしています。
それは、送られる側と送る側がそれぞれの考えや想いを知ってお互いに理解しあう事が、ご家族にとっての『満足のいくご供養を実現すること』の最も近道だと思うからです。

皆様も日常会話の中で「こんな話を聞いたけど、どう思う?」とご家族に聞いてみると、これまで知らなかったいろいろな事が分かって面白いかもしれませんね。

シオタニ株式会社
一級葬祭ディレクター
(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査)
川本 直