リレーコラム

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身寄りのない人


昼食をとりに自宅にいたところ、最近は全く使わなくなった電話が鳴った。
どうせ何かの営業かなと思いつつ電話に出ると、「横浜市金沢区のTと申します。」と女性の方の声。

「Nさんてご存知ですよね。」

Nさんは横浜の実家の父が経営する小さな会社で長年働いてくれたおじいちゃんだ。
歳をとってからは実家の庭の手入れをしに、たまに来てくれていた。

「私Nさんとご近所で親しくさせていただいておりました。
実はここのところ入退院を繰り返していたNさんが今月に入り亡くなりまして、身寄りがないので、身の回りのものを全て処分することになりました。
写真などはさすがに処分するのはどうかと思って、私が少し引き取ったのですが、その中にあなたからの年賀状を見つけたので連絡した次第です。」

今はもう大人になった子供たちが幼い頃、「お手伝い」と言いながらNさんと一緒に庭の葉っぱを集めたり、両手いっぱい運んだりしていたことが懐かしく思い出された。

「お子さんたち可愛らしいですね。あなたからの年賀状を全部とってありましたよ。」

正直、最近Nさんのことを思い出したことはなかった。
プリンターで打ち出しただけの年賀状を、大切に保管してくれていたNさんを思うとたまらなかった。
そして自分が知らないところで自分を大切に思ってくれていたNさんに胸が熱くなった。

しばしTさんと話し、お礼を伝え、電話を切った。
あたり前のことだけれど、人との関わりのない人生なんてない。「身寄りのない人」にも人との関わりがあって、大切な思い出を共有している。
そのことに改めて気付かせてくれたNさんとTさんに感謝。

Tさんと私の中で、Nさんとの思い出は生き続ける。

 

終活カウンセター上級
シオタニ株式会社 塩谷知子