知っておきたい遺言のこと(下)
司法書士の加藤美帆です。
今回も、前回に引き続き、遺言についてお話しさせていただきたいと思います。
「付言事項」ってご存じですか?
遺言事項以外のことも付言事項に記載が可能です。
ただし、遺言事項と違って、法的拘束力はありません。
では、どのようなことを書くものなのでしょうか?
遺言者にはAとBの二人の息子あり。 【遺言事項】 【付言事項】 |
一昔前は、なんとなく長男が財産を継ぐものという風潮がありましたが、昨今は、家族の有り方、考え方も様々です。
兄弟間では、遺言で親が自分より他の兄弟に多くを与えた場合、「財産の配分=愛情の配分」と誤解しがちです。
しかし、遺言を遺した親には他に動機があって(家を継ぐ子、障害のある子、大学に行かなかった子などへの配慮)、この遺言こそが最後の帳尻合わせと考えていることがあります。
上記の具体例では、Aには、それなりの負担や責任を負ってもらうから、財産も相続させたいという思いが伝わってきます。
遺言を書くに至った動機を付言事項に書くことで、相続人は遺言の内容、つまり遺言者の思いを納得して受け入れることができ、相続人間のトラブルを未然に回避できるかもしれません。
遺言のご相談にのる上で、遺言事項ももちろん重要ですが、この付言事項にあたる「遺言をのこす思い」を大切にさせていただいております。
「家族なんだから、言わなくても理解してもらえるはず」という思い込みが昨今の相続争いの一つの原因になっているように思われます。
家族だからこそ、言葉にして伝えるべきことがあるのではないでしょうか。
遺言への思い、それに加えて、生前には言葉にしにくい感謝の気持ちを伝える場としても付言事項をぜひご活用ください。