リレーコラム

リレーコラム

もう少し時間があれば・・・


楽しく短い物語を掲載しました。
今回の私(鳥越介順)のオリジナル作品をお読みいただき
終活を考える上でちょっとしたアクセントになればと願っております。

 

水色の天使

「カバンの中身」

真夜中、彼の枕もとに水色の天使が舞い降りて彼に言いました。
「あなたはもう死んでいますよ、さあ行きましょう!」
彼は突然のことに驚き、動揺しました。「えっ?何?今すぐ?」
天使「そうです。今すぐです。このカバンに入るだけの物は天国に持って行けるので大切なものを詰めてください。あと5分です。」
彼「えっ!訳わかんないけど・・5分、5分・・・天国では何が要るのかな??・・・
とりあえずお金は要らないし、携帯も・・寒いと辛いので上着と靴下は入れといて・・・」
彼「やっぱり上着はやめて ハハッハッ だって身体ないもん!
えーとっ えーと・・・時間ないぞ・・落ち着け 落ち着け!
大切なものって言ってたよな、そうだ家族写真だ!・・どの写真にしようかな・・うわぁー涙出てきたぁ・・何で俺は死んだんや・・」
天使「さあ時間ですよ!私の手に捕まって!」
彼「えっ!もう、うわぁっー!!とりあえず1枚は写真を・・」
ビリっ!「ちょっと破れたかな・・・」
天使「さあ早く!!」ピカッ!うわぁー眩しい!!
彼「ここが天国か・・・結局持ってきたのは靴下と家族の写真1枚だけ。何てことだ!その写真も私ばかり大きく写り、妻と娘が一緒だが息子は写っていないなんて・・・しかも端が破れてるし・・」
天使「どうしたんですか?浮かない様子ですね?」
彼「もう少し時間があれば冷静に考えてこのカバンに・・・」
天使「そうですか。もしもう少し時間があれば、あなたはここに何を持ってきたというのですか?」
彼「・・・・・・・」
彼は言葉を失った。

 

作:鳥越介順